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松戸の老舗特集

江戸前の本寸法■「そば処 関やど」【1】

かつて江戸・東京人の蕎麦に対するこだわりは、かくのごとき 深く、濃いものだった。


江戸前の本寸法。
【本寸法】…本格であること。お手本になるもの。(基準となるような)やり方。

「そば処 関やど」の主人のことばに
当たり前の仕事を施した 当たり前の蕎麦」 とある。
<『極めつけ千葉の蕎麦72店』(ワンツーマガジン社)

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江戸時代中期から、江戸では うどんよりも蕎麦が主流となっていく。
この背景には、「江戸患い(えど-わずらい)」と呼ばれた脚気(かっけ)を、ビタミンB1を多く含む蕎麦を食べることで防止・改善できたことも大きいという。

江戸っ子の こだわり・気取りは高まり、蕎麦と江戸文化は強く結びついてゆく。

「蕎麦つゆにそばをたっぷりと浸すのは田舎者」であり、
江戸っ子は さっとつけてすすりこむのをとする>風潮が生まれた。
江戸っ子が 「一度でいいから蕎麦つゆにたっぷりつけて食ってみたかった」
と 言い残して絶命する、という落語の枕が現在も残っている。

酒を蕎麦と楽しむ趣向は、粋と高く評価され、
夕方早くに そば屋ひとり種物(たねもの)の蕎麦を肴酒を呑む>ことが、
江戸っ子の見栄と気取りとして、大いに流行してゆく。
【種物】(たねもの)…関東で、かけそば・かけうどんに、てんぷら・卵・油揚げなどの具を のせたもの。

江戸・東京では、そばを食べることを【たぐる】という。この言葉も、気取りだろう。
先年 故人となった国会議員でもあった落語家が、
(なわ)でも たぐりに行こうかい」と誘うのを耳にしたことがある。

夏目漱石は 『吾輩は猫である』で、
粋人を気取る登場人物に、「うどんは馬子(まご)の食うもの」と言わせ、
勝手に出前を取って そばの講釈をしながら ひとりで食べる姿を描いている。



江戸・東京人蕎麦に対するこだわりは、かくのごとき 深く 濃いものだった。

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そばについて、いまは亡き 明治生まれの古老に きびしく教えられた…。
少なくとも昭和が終わるまでは、街のあちこちにしばしば視られる風景でもあった。


「そばつゆに そば全体浸すな
たぐった蕎麦の先だけを つゆにつけ、すすりこむものだ」

古老に言われて…。そばつゆにつける そばの先をみつめて、すすりこむ若者…。

「最初に つゆをつけない蕎麦そのもの味と香りを味わって すすりこむんだ。
噛むな! 飲みこんで、喉ごし と 鼻に抜けていく香りを楽しめ」

「後から つゆの味が 追いかけてきて、そこで初めて蕎麦そばつゆが交じりあう」

若者が小首をかしげながら、古老に問いかける…。
「なるほど……。しかし、なぜこのような食べ方そばつゆの味になったのでしょう?」

そばの風味十分に味わうには、どう食べればいいのか…を考えたってことだろ。
江戸っ子が蕎麦そのもの香りを味わわなきゃ、蕎麦に申し訳なかろうがい。
だから、つゆ辛くして そばの先少しだけにつけて食べるようになったんだな」

つゆにつけていない蕎麦からは、それ自体美味さ香りが味わえて、
その後で追いかけてくるように そばとつゆが交じりあう旨さも味わえる、ということなのですね」

「わかってきたじゃねえか…」

「これが、江戸前の本寸法 ということですか」

「おうよ。いなせだろう」


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この古老が世を去って、数十年が過ぎた。
しかし、いま 目の前に 百年を越えた 江戸前の本寸法 が息づいている。

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蕎麦の本寸法を、厳しくも噛んで含めるように教えてくれた古老は、
それ以後、そばをご一緒させてもらっても、もう蕎麦について私に何も語らなかった。

微笑みながら…ただ、ひと言。
「オレの死ぬ前に、おまえが当たり前に蕎麦が食べられるようになってよかったぜ。
ありがとよ」

なぜ、古老の想い出がよみがえってきたか。
「そば処 関やど」の主人のことばに、古老のことを久しぶりに想いだしたのである。

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当たり前の仕事を施した 当たり前の蕎麦





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そば処 関やど 
[住所] 松戸市本町7-2 [アクセス] JR・新京成線 松戸駅西口より徒歩5分
[電話番号] 047- 361-0235 [営業時間] 11:30~19:00 [定休日] 月曜

明治元年頃、流山で「そばや」を営業していた関宿屋は、松戸に移転、松戸神社辺りに開業。
明治38年、現住所にそば、天丼店として新装開店。
昭和41年、地区の区画整理で店舗を新装し、
昭和43年、そばは昔の建物を移設し、現在の「そば処 関やど」となった…という。